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雲仙・普賢岳噴火災害伝える遺構家屋、劣化で撤去へ

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  雲仙・普賢岳の噴火災害 の教訓を伝える長崎県南島原市の「土石流被災家屋保存公園」で、展示中の被災家屋の撤去作業が23日から始まる。災害遺構として屋外展示してきたが、劣化が進み、県などが修復は困難と判断した。死者・行方不明者43人を出した大火砕流から30年。来場者の減少を受け、併設する道の駅は11月末で閉館となり、風化を防ぐ難しさが浮き彫りとなっている。(坂口祐治、受田至弘)

解体される木造平屋の被災家屋。建物は埋まり、屋根は折れるように崩れている(左奥は雲仙・普賢岳)(9日、長崎県南島原市で)=坂口祐治撮影
解体される木造平屋の被災家屋。建物は埋まり、屋根は折れるように崩れている(左奥は雲仙・普賢岳)(9日、長崎県南島原市で)=坂口祐治撮影

 解体されるのは、木造の平屋と2階建ての2棟。1992~93年に繰り返された土石流で1階の天井付近までが土砂で埋まっている。

 公園内で展示している11棟の被災家屋のうち、3棟は半永久的な保存を目指してテント状のドーム内で展示している。残りの8棟は被災当時の状態で屋外展示してきたが、2棟については、建物の傾きや屋根の崩落がひどくなっていた。

 被災家屋の整備などに関して、県や南島原市、地元住民で話し合う検討委員会は昨年12月、倒壊の危険があり、修復も困難と判断し、解体と撤去を決定。今月23日から作業を始めることになった。

 県によると、公園は99年4月のオープン以降、災害の歴史を残す先行例として注目を集めてきた。2011年の東日本大震災後は、復興庁や岩手県大槌町や大学など計11団体が「震災遺構設置の参考にしたい」などとして視察に訪れた。

 普賢岳の噴火災害で約4年間の避難生活を経験し、約20年前から、公園などのガイドをしている長崎県島原市の長谷川重雄さん(72)は「当時の状況を訴える遺構が、姿を消していくのはさびしい」と語る。

 全国の災害遺構にも詳しい「雲仙岳災害記念館」(長崎県島原市)の杉本伸一館長(71)は「災害遺構が被災現場にあるからこそ、その災害を追体験できるが、現地で保存することは自然の影響を免れないということでもある」と現地保存の難しさを指摘する。

雲仙・普賢岳の噴火災害  1990年11月17日、普賢岳が198年ぶりに噴火。91年6月3日の大火砕流では、長崎県島原市上木場地区で警戒に当たっていた消防団員や警察官、報道関係者ら計43人が巻き込まれた。93年6月の火砕流でも住民1人が死亡し、計44人が犠牲になった。96年6月に噴火活動の「終息宣言」が出され、被災家屋は約2500棟、被害総額は約2300億円に上った。

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