中村雅俊が今月・来月ツアー フルオーケストラと初の全編競演 音の波、半端じゃない

2021年8月3日 16時28分
 歌手で俳優の中村雅俊(70)が今月下旬から九月にかけて、全編フルオーケストラと初競演するツアーを開催する。昨年はコロナ禍で、四十五年間欠かさず続けてきたコンサートツアーが中止になった。「しばらく歌から遠ざかっていたので、すごくうれしい。時間をかけて入念に準備している」と語る。 (清水祐樹)
 ツアーがなくなった昨年。「心にスポッと穴が空いたような感じ。こんなにオレにとって重いものだったんだ」と気付かされた。単発のライブもなく、「人前に出る仕事は全くなかった」一年だった。
 今年は心機一転、個人事務所から既存の芸能事務所に移籍した。「事務所の運営もやっていると、役者や歌手の活動に規制がかかるというか。もっと自由な生き方をしたいと思った」
 一九七四年にテレビドラマ「われら青春!」で主役に抜てきされ、俳優デビュー。自ら歌った挿入歌「ふれあい」が百万枚を超える大ヒットとなった。その後も多くのドラマや映画に出演し、歌手としてもドラマの主題歌「俺たちの旅」や、「恋人も濡(ぬ)れる街角」などで人気を集めた。
 俳優と歌手、二足のわらじをはき続けて古希を迎えた。「役者は依頼があってできる、受注生産みたいなもの。音楽活動はある程度、自分の意思で続けられるので、歌うことは常にベーシックにしていたい」との考えだ。
 今年も恒例のツアーはないが、フルオーケストラとの本格的な競演に初めて挑む。不安もあるというが、「会場を流れる音の波が半端じゃなく、お客さんの感動につながると思うとドキドキ感が収まらない」と顔をほころばせる。
 往年のヒット曲はもちろん、遊び心も加えた自信の選曲だ。「『ふれあい』なんかはすごくオーケストラに合うと思う。ほかにも意外な曲や隠れた名曲みたいなもので勝負したい」
 宮城県女川町出身。東日本大震災の被災地を回り、復興支援の一助にと歌を届けてきた。涙を流して聴く人もいて「インフラなどが整備されても、心の傷は癒えない。音楽の役割は非常に重要だと思う」と話す。
 コロナ禍では、文化芸術が政策的におろそかにされる現実にも直面した。「生きていくために、パンやコメとは違った意味で大事なもの。国には扱いを改めてほしい」と訴える。
 久しぶりのコンサートを前に「まずは皆さんとの再会を喜び合い、歌を通じて気持ちを一つにしたい」と意気込んでいる。
 ツアーは八月二十八日の兵庫・西宮の県立芸術文化センター(大阪交響楽団)を皮切りに、九月三十日の東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホール(新日本フィルハーモニー交響楽団)まで計四カ所。指揮者は円光寺雅彦。

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