中村雅俊さん 前を向いて幸運キャッチ 支えてくれた人に感謝しながら

4年ぶりリアル開催 3月10日「Reライフフェスティバル2023春」に登場

2023.02.05

 朝日新聞Reライフプロジェクトは、人生後半の自分らしい生き方を応援しています。活動の柱の一つが大人の文化祭「朝日新聞Reライフフェスティバル」。コロナ下でオンライン開催が続きましたが、今年は3月10日、4年ぶりにリアルで開催します。出演者の一人、俳優・歌手の中村雅俊さんには「出逢い~自分を創り上げてきたもの~」と題してお話しいただきます。72歳でも若々しい中村さんの活力の源とは――。

 

フェス当日の様子を収録した動画はこちら(4/14まで配信中)

リライフ面中村雅俊さん1

 レギュラー番組の収録の合間に控室でインタビューをすることに。ドアを開けると、こちらに視線を向け、あ、と気づいた表情でスッと立ち上がる。「今日はよろしく」と人なつっこい笑顔と聞き慣れた声であいさつを受けた。

 動作一つひとつが自然でスムーズ。若々しい立ち居振る舞いは、年をまったく感じさせない。

 「特に継続してなにかやってるわけじゃないんですよ」とにわかに信じがたいことを言う。よくよく聞くと、家で腹筋をしたり腕立てしたり、ジムに通った時期もあったそうだ。「ただ俺たちのような仕事って、ドラマが入ったり舞台に出たりすると時間がなくなっちゃって。だからすごいやってる、やらない、やってる、やってないの繰り返しかな。いま思うとね」

 あえて継続していると言えるのはウォーキングだそうだ。「意識的というか、もともと街をぶらついたり、川辺に行ったり、神社仏閣を回ったりって好きなの。どっちか言うとアウトドア派。それが結果的によく歩くってことにつながってたんだね」

 そのウォーキングがきっかけで気づけたことがある。10年近く前、歩いてて違和感を覚えた。「毎日歩いていると、やっぱ体調の良しあしに敏感になるのかな。ちょっと違うなって思って、年齢も年齢なんで病院に行ったら、血管に狭窄があるって。俺が4歳の時、40代の父親が心臓の病気で亡くなってるんすよ。あ、やっぱ関係あるのかなって」。それから血液がさらさらになる薬などが常用になった。ただそれ以外は健康そのもの。今のところ大病とも無縁だ。

 年を重ねると、体力が落ちる、速く走れない、目も記憶力も悪くなる。ネガティブなことを挙げればキリがないのは多くの同世代と同じだ。「健康な身体と精神が両輪。俺が幸運だなって思うのは、この年になっても主役をやってくれとか、コンサートも続けろとか、そう言ってくれるスタッフやファンの方たちがいてくれる」。自然と下を向いていられなくなり、前を向いて進んでこられた。

 「俺たちの仕事って、定年があるわけじゃないし、どこまでやれば良いのか分からないところあるでしょ。だから、目の前のことをとにかく一生懸命努力してきたつもりなの」。続かなかったトレーニングもその時はとことんやった。その繰り返しで今がある。
 気持ちの部分でいうと、中村さんらしい〝身だしなみ〟も関係していそうだ。最近はあまり新しい服を買うことはないそうで、あるものを着回している。「若い時のそのままなんで、いい年してということもあるかもだけど、逆にだから老け込まないってのもあるのかな。後付けだけど」と笑う。

リライフ面中村雅俊さん2

 役者人生のスタートポイントで、ドラマ「われら青春!」の主人公・教師役に抜擢された。23歳だった。

 「もし東映のヤクザものでデビューしてたらぜんぜん違ってた思わない? 青春ドラマだったのは大きかったな」

 人生を左右する運の大きさを考える。「青春ものもそうだけど、あのドラマは主役が必ず歌を出すことになってて。役者修業したくて劇団(文学座)に入ったんだから歌なんか考えてもいなかった」。挿入歌「ふれあい」はミリオンヒットを記録し、歌手と俳優の二足のわらじになって今がある。

 そんな運の話の中で「棚からぼた餅」論が飛び出す。幸運を手にする例えだが、ただ待っているだけじゃないと話す。「ちゃんとキャッチできるかが肝心だと思うんです。口をあんぐり開いてるだけじゃあねえ」。急に落ちてきたものをフットワーク良くつかみ取れるか。それに備えた日々の努力の大切さを説く。「先が見えない仕事だから、一つひとつ立ち向かって、やれることはとことんやってきたつもり」とここは表情硬く言い切った。

リライフ面中村雅俊さん4

 もちろん、自分の努力だけではどうにもならないことも分かっている。手をさしのべ、支えてくれた人への感謝を、70歳を前に強く意識しだした。「前ばっかり見て生きてきたけれど、ふと、世話になった人たちにお礼も言ってなかったなと気づいて。そういう年なんっすかね」。

 有象無象の若手俳優の中から「われら青春!」に起用してくれた日本テレビの岡田晋吉プロデューサー、ドラマ「俺たちシリーズ」の脚本家、鎌田敏夫さんらだ。感謝を伝えるつもりが昔話で盛り上がり、気持ちが20代に戻っていった。「歌もそうなんだけど、その時の気持ちに戻ると、なんかもう一回やってみようかって気にね、やれるか分からないけれど」。懐かしむだけでなく、それを〝前向き〟につなげていく。「これ、同世代にオススメできるよね」とこのときは無邪気な笑顔を見せた。

 そう言いながら付け加えたのは――「なんか格好良いようなこと言うなよと思われそうだけど、やっぱ一番感謝してるのは妻(俳優の五十嵐淳子さん)なんです」と照れくさそうに教えてくれた。仕事で忙しかったり、酒ばかり飲んで朝帰りしたり、おしどり夫婦と言われていたが、「ずいぶんとないがしろにしてたな、悪かったなって」。

 ここ数年のコロナ禍で一変した。家にいることが多くなり、夫婦そろって毎食の食卓を囲む。家事はすべて妻任せだったが、最近は掃除を手伝うそうだ。「その程度ですけどね。初めは不思議そうな顔してましたが、長く一緒にいることで前より仲良くなったかも」と顔をほころばせた。

 30代の頃、50歳を一つのゴールと考えたそうだ。「その時に、よく生きてきたって思えたら、そこそこの人生を送ってるってことになるんじゃないかって」。それから20年。「こんな70代になるって想像もできなかった」と言いつつ前を向き続ける。その活力の源を、3月10日のトークショーでお聞きする。

(雑崎徹、撮影・篠田英美)

 中村雅俊さんの主演ドラマ「おもかげ」が3月下旬、NHKBS4Kで放送される。浅田次郎さんの同名小説が原作。昭和の復興期を支えてきた商社勤めの男が、定年を迎えた日の送別会の帰宅途中で倒れる。意識不明のまま病院のベッドに横たわる男の周りで、妻や元同僚、幼なじみ、娘婿らが思いを漏らす。そして男は自分の姿を横目に、謎の女たちに連れらえて自分の過去をさまよう――。ノスタルジーとミステリーが入り交じり、思いと記憶がつながるラストに、思いがけない感動を呼ぶ作品だ。

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  • 中村雅俊
  • 中村 雅俊(なかむら・まさとし)

    俳優・歌手

    1951年、宮城県生まれ。1973年、慶應義塾大学在学中、文学座付属演劇研究所に入所。1974年、NTV「われら青春!」の主役に抜擢されデビュー。挿入歌「ふれあい」で歌手デビューし、売り上げが100万枚を超える。 今までに連続ドラマ34本を含め、主演作品は100本以上。歌手としてもコンスタントに曲を発表し、現在シングル55枚、アルバム41枚をリリース。デビューから毎年行う全国コンサートも1500回を超える。

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