学習と健康・成長

採用増える「ジェンダーレス制服」、誕生の背景は トンボのデザイナーに聞く

2021.04.02

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小林 香織
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多様性への配慮を目的に誕生した、性差を感じさせない「ジェンダーレス制服」。近年はSDGsの浸透もあり、採用校が増加しているようです。「生徒の個性や意思を尊重した取り組み」との評価がある一方で、「奇異の目で見られないか心配」といった懸念する声もあります。1930年から制服の製造販売を行う株式会社トンボのデザイナー奥野あゆみさんに、「ジェンダーレス制服」誕生の背景や正しい運用を聞きました。(写真は自由な組み合わせで選べるジェンダーレス制服の例=トンボ提供)

Ayumi_Okuno

話を聞いた人

奥野 あゆみさん

株式会社トンボ デザイナー室 デザイナー

(おくの・あゆみ)2012年にトンボに入社し、スクール企画部へ配属。学校制服のデザイン提案やプレゼンテーションを担う。2015年にスクール商品開発へ異動、新商品の開発などを担当し、ジェンダーレス制服の取り組みをスタート。2020年に現配属部署のデザイナー室へ異動。

近年は「多様性への配慮」が求められる制服へ

ーー昨今注目を浴びているジェンダーレス制服ですが、そもそもどのようなものがあるのでしょうか?

ジェンダーレス制服は「男女兼用」と「組み合わせの自由化」の二つに大別されます。一つは性差が出にくい男女共通柄、ユニセックスなデザインを採用するケースです。例えば、前合わせを左右自由に変えられるジャケットや、身体のシルエットが強調されないスラックスなどがあります。通常、スラックスは男女の体型の違いに合わせてシルエットを変えるのですが、あえて性差が出にくいパターン設計を採用する事例もあります。

ジェンダーレス制服_1
左はヒップが強調されないよう調整した女性体型向けのメンズライクパターン設計、右は女性の体型に合わせた通常のパターン設計(トンボ提供)

もう一つは、スカート・スラックス・ネクタイ・リボンなどの組み合わせを自由に選べるケース。弊社が関わっている学校で最も多いのがこの事例で、従来の制服にスラックスのみ追加導入するケースが目立ちます。スカートかスラックスのどちらかを選んで購入するため、保護者に金銭的な負担をかけずに運用できるのもメリットです。

ジェンダーレス_2
選択肢を増やしたジェンダーレス制服の例(トンボ提供)

スラックスを選ぶ女子生徒は学年に5人未満とごく少数で、スカートを選んだ男子生徒は実例がほとんどありません。もう少しジェンダーレス制服が浸透すれば、「選びにくい」という心理的なハードルが下がるかもしれませんね。

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