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原口一博さんの正しさと異常さと

立憲民主党の原口一博さんが、なんだか最近「DS」(ディープステート)ということを口走るようになって、まともな人を困惑させています。
原口さんのツイートやYoutubeを少し見てみると、根幹は「まとも」なことも言っているのですが、第二次大戦後のアメリカによる覇権構造を、陰謀論者の造語である「DS」という言葉で括ってしまうので、おかしなことになっていることがわかります。

この動画では、原口さんは「日米同盟が平和を守っている」という虚構を、真面目に信じていたことを告白し、それが民主党政権時の実体験などで覆されたことを語っています。まあ脳天気な人だったわけです。
率直に言って、戦後の歴史を知っていて、日本や世界で起きていることを眺めていれば、日米同盟が日本を守ったりしていないことは、少し考えればわかるのです。
大臣まで務めた政治家がこれかよ、という気もしますけど、日本の政治家や国民の多くが、それ以下だと思ったほうが良いのも、また悲しい実情です。残念ながら原口さんは、その点では「まだましな方」ではないかと思います。

アメリカ従属の実態を知った原口さんだが

戦後の冷戦体制やアメリカの日本支配については、僕も過去のnoteで触れました。

・ 冷戦世界はどのように作られたのか 
・ 日本におけるCIAの活動(自民党とアメリカによる日本支配の確立)

拙いブログの小文ですから、もっと書かれるべきことは多いのですが、戦後の日本がアメリカに従属し、日米同盟の名のもとで「アメリカの利益のために」支配されてきたことは、常識として認識しておくべき事実です。

そこで日本の政治家や国民が取り組むべきなのは、そこからどうやって抜け出すか、どうやってアメリカの横暴から逃れるかということのはずで、原口さんもそういう認識に至ったようです。
しかし米韓を含む右翼勢力は、それを「それなら日本が自力で防衛力を持たなければ」と唆し、結局はアメリカが使う駒としての「日本の防衛力」を増強させているのが実情です。
痴呆症が始まったらしいバイデン大統領が、うっかり「岸田首相に防衛費倍増を3回働きかけた」と口を滑らせて、後から慌てて訂正しましたが、そんなことは普通の人ならわかっているのです。

ちゃんと事実を拾わないといけない

アメリカが日本を意のままにできるのは、言うまでもなく政権与党である自民党を通じた支配が確立しており、その衛星政党(維新とか国民民主とか、かつての民社とか)を利用しているからです。そのためにアメリカは「日本におけるCIAの活動」に書いたような工作も行ってきたし、今も行われているはずです。
また、韓国の朴正熙や全斗煥ら軍事独裁政権も、KCIAや統一教会(勝共連合)を使ってアメリカや日本への工作を活発に行い、北朝鮮に対抗するための軍事力支援を日本に負わせようとしてきました。
この韓国による働きかけについても、過去のnoteで少し具体的に触れました。70年代までのKCIAと統一教会による、アメリカでの活動については、アメリカ下院の『フレイザー報告書』にまとまっています。

・ PD手帳「韓国国家情報院と日本極右」
・ ブルーリボンバッジ
・ フレイザー報告書

しかし、原口さんはこうした具体的な事実に丁寧な目配りができずに「なんだか知らないけど「DS」という悪の組織がある!」という、いわゆる陰謀論に飛びついています。
DS陰謀論はQアノンと呼ばれる人達による荒唐無稽な物語で、なんと「トランプ大統領はDSに立ち向かう正義の指導者」みたいな、常軌を逸したトンデモなのです。あほかいな。

なぜDSが出てくるのか

こうなると、当然ですが原口さんの様子を心配したり面白がったりする人が出てくるわけです。(中には原口さんに同調しちゃう人もいますけど)
しかし原口さんは耳を貸しません。

原口一博さんのツイート

ここで出てくる藤原直哉さんとか、ご本人たちのwebサイトを見に行くと、講演やコンサルティングを飯の種にしている人たちのようですが、言ってることがかなりトンデモな陰謀論です。ある程度まともな部分もありますが、講演のために話を盛ろうとしてきた結果なのか、陰謀論の世界観にはまり込んでいる人たちです。

原口さんは「かつて陰謀論と言われたものが事実だったこともある」と言っていますが、その「陰謀論と言われたもの」の内容や質が問題なのです。
たとえば長きにわたる自民党と統一教会の関係だって、知ってる人は当たり前に知っていて、日本共産党なんかはずっと戦ってきたわけですが、知らない人は「陰謀論じゃないの?」と思ってたかもしれません。
下山事件とかを代表に、真相は不明とされたままの多くの事件も、アメリカが絡んだことが疑われていますが、人によっては「陰謀論」で片付けたいでしょう。統一教会による赤報隊事件への関与も、当時から「陰謀論だ」という声はありましたが、今となっては最も蓋然性が高い推測でしょう。

しかし、藤原直哉さんとかのDS論は、そういった合理的な事実を背景にした蓋然性が、非常に乏しいです。トランプ大統領は戦争を起こさなかったから「平和を愛する光の使者」なのではありません。
あの守銭奴は自分の金儲けにしか興味がないから、アメリカの兵隊が死んで、儲けにもならない戦争をするのではなく、日本などに武器を買わせて戦争の肩代わりを担わせる方針を採っただけです。単純な話であって、陰謀論で説明するようなことではないのです。

陰謀論に惹かれてしまう理由

原口さんは、それほど頭の悪い人でもないし、私利私欲の人でもないと信じていますが、そういう人が「DS」みたいな話に飛びついてしまうのはなぜか。
やはり、原口さん自身が述べているように、それまで信じていた「アメリカは正義」という単純な世界観が崩壊したため、それに代わる単純な世界観を、手軽なところに求めたからだと思います。

そういう行動は大きな間違いの元です。藤原直哉さん及川幸久さんは、講演や情報発信を金儲けにしている人で、そういう話をするのは上手かもしれませんが、手軽だからといって、そんなふうに「覚醒」しちゃったらだめなのです。
きちんと歴史や事実に照らし、注意深く世界を観察し直すことを、改めて自分に課さねばいけないのです。
これは知的負荷の高い作業で、病身でもある原口さんには大変かもしれませんが、けっしてできない相談ではないと思います。

ともあれ、まずはそのブルーリボンバッジを外してみてはどうですかね?

原口一博さん近影
ブルーリボンバッジをよろしく

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