「極楽鳥」として知られるフウチョウ科の鳥の一種、カタカケフウチョウの求愛はかなり変わっている。オスが首のまわりの漆黒の飾り羽をいっぱいに広げると、鮮やかな青色をした胸元の飾り羽と、青い目のような模様が現れる。そして求愛のダンスが始まる。メスのまわりで小走りで半円を描き、求愛が受け入れられるまで踊り続けるのだ。
これまでカタカケフウチョウは、43種のフウチョウ科のなかで1種しかいないと考えられていた。しかし、鳥類学者のエドウィン・スコールズ氏と写真家のティム・レイマン氏は、「フォーゲルコップカタカケフウチョウ」を新種とする論文を科学誌『PeerJ』に発表した。
野外調査と博物館の標本の分析から、フォーゲルコップカタカケフウチョウが、これまで知られていたカタカケフウチョウ(今はオオカタカケフウチョウと呼ばれる)とは遺伝的に異なるという結論が導き出された。(参考記事:「ナショナル ジオグラフィック2012年12月号『極楽鳥を追いかけて』」)
新種につけられた「フォーゲルコップ」という名前は、「鳥の頭」を意味するドイツ語(フォーゲルコプフ)に由来する。これは、この鳥が発見されたインドネシア領ニューギニア島のドベライ半島が、地図で見ると鳥の頭のような形をしていて、かつてはドイツの植民地だったからだ。
独特な鳴き声と求愛ダンス
オオカタカケフウチョウと同じく、フォーゲルコップも「地上で最も黒い」とされる漆黒の羽毛をもつ。これは羽毛の表面の特殊な微細構造が、光をほぼ100パーセント吸収するからだ。どちらの鳥も、オスがメスに求愛するときには、鮮やかな青い模様が浮かびあがる。その様は、まるでマンガに登場するキャラクターのようにも見える。
オオカタカケフウチョウとの違いは、求愛ダンスにも見られる。オオカタカケフウチョウはピョンピョン跳びはねるが、フォーゲルコップは左右に半円を描くように小走りする。米コーネル大学鳥類学研究所のスコールズ氏は、「滑らかな床の上に置いたゼンマイ式のおもちゃのように動くのです」と説明する。(参考記事:「小鳥の超高速タップダンス、健康の指標にも?」)
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