中村雅俊「愛の伝道師、来年50周年」五十嵐淳子、渡辺徹さんとの半生を振り返る

スポーツ報知
「今まで健康でいられるのも、中学と高校で6年間もバスケットをやって鍛えたから」と語る中村雅俊(カメラ・頓所 美代子)

 俳優・中村雅俊(72)が、今月29日から神奈川・ビルボードライブ横浜を手始めに「Billboard Live 2023 ~The Look Of Love~」(3都市10公演)をスタートさせる。1974年に日本テレビ系ドラマ「われら青春!」で主演俳優デビューを果たし、自身が歌ったドラマの挿入歌「ふれあい」がヒット。一気にスターダムを駆け上がった。来年デビュー50周年を迎える中村が、愛のある半生を振り返った。(増田 寛)

 情熱的な赤いジャケットがいつまでも似合うダンディーな姿からは、青春ドラマで熱血教師役をした面影が今でも重なる。「The Look Of Love」というライブツアーのサブタイトルも相まって、“愛の伝道師”をほうふつとさせる格好だ。

 「Lookには、面影という意味もあってね。サブタイトル通り、ラブソングを多めにやろうと思う。大きく人類愛から始まり、パーソナルな愛も含めて、愛のいろんな形を伝えたいね」

 新型コロナも5類感染症に移行してのライブツアーで、声出しも解禁される。愛してやまない客席からの声援も戻ってくる。「コロナ禍で今までは当たり前のようにやってたことが次々にNOと言われ、目に見えない恐怖心があった。俺も世の中的には高齢者だし、感染したら死ぬかもしれない。いろんな恐怖との闘いがあった中、ここまで戻ってきた」と気合が入る。

 ただ、コロナ禍は愛の充電期間でもあった。新鮮だったのは、妻で女優・五十嵐淳子(70)との2人の時間だという。

 「結婚46年目にして、初めて妻と一緒に居る時間がすごいあって、俺としては良かった。ずっと歌手・俳優として走り続けて来たから休みもあまりなかったし、今までと違った結婚生活だった。朝、昼、晩と一緒に食事をする毎日だけでも、新鮮だったなぁ」

 高校生時代は外交官になることを夢見て、英語の勉強をするために上京。1浪を経て慶大の英語サークル「ESS」に入部し、英語劇に没頭した。「日本語で芝居をしたい」と思い立ち、在学中に当時倍率が40倍以上あった文学座のオーディションに「なぜだか知らないけど」合格。慶大卒業直後の1974年4月に日テレ系「われら青春!」で先生役として主演デビューを果たした。

 「いきなり貧乏大学生がヒットを当ててしまった」と当時を振り返る。ドラマの挿入歌「ふれあい」を歌い、発売から1か月で音楽チャートを席巻。“歌う青春スター”が誕生した。

 「全国区になる実感は当時じゃないと経験できなかったと思う。有線で街中に俺の曲が流れて、つい最近まで全く見向きもされなかった大学生だったのに、みんな俺のことを知ってる。マジックみたいなものです」

 追っかけもすごかった。中村はデビューして1年間、家賃1万円にも満たない四畳半の学生アパートに暮らしていた。「部屋に鍵がなくて。仕事終わりに帰ってくると、アパートの周りや階段の途中にファンの女の子がいた。絶対ドアを開けて部屋に上がられているなって(笑い)。共演の柳生博さんに『早く引っ越せ』と言われた」と懐かしむ。

 人気絶頂の中、77年に妻・五十嵐と結婚した。「結婚したら仕事がなくなるぞ」と反対する周囲を振り切ってのゴールイン。当時“雅俊ロス”がファンの間を駆け巡った。

 「普通、スポーツ新聞って結婚したらお祝いムードで『おめでとう』でしょ? 俺の時は見出しが『裏切り者の雅俊』の新聞があってさ。その新聞は今でも持ってるよ。当時はファンクラブの会員が8割以上いなくなったね」

 ただ、時代が中村を放っておかなかった。再浮上のきっかけもドラマと歌だった。78年、同局系「ゆうひが丘の総理大臣」で主演の教師役を務め、主題歌「時代遅れの恋人たち」をリリース。81年にはTBS系「われら動物家族」で主演し、歌った主題歌「心の色」がオリコン、TBS系「ザ・ベストテン」、日テレ系「ザ・トップテン」で1位を獲得。82年、「心の色」でNHK紅白歌合戦に初出場した。

 「ありがたいことに、ずっと青春もののドラマで主演をやらせてもらっていた。結婚後にいなくなったファンクラブ会員も戻ってきてくれた。V字復活ですよ」

 月~木曜にドラマの撮影、週末にはコンサートの日々で喉を酷使し、病院通いする時期もあったが、来年に中村はデビュー50周年を迎える。「先を見ない性格だったからここまで来られた。なるようにしかならない。自分の仕事は受注生産。仕事の依頼が来て初めて成立するもの。先のことを考えてもしょうがないし、新しいことはあまり望んでない」と謙虚な姿勢だが、歌と芝居への愛は変わらない。

 「今あることの延長は、ずっとやってきたい。歌うこと、芝居はずっと続けたい」

 文学座時代の後輩で、昨年11月に敗血症のため亡くなった俳優・渡辺徹さん(享年61)への思いも背負う。

 「徹の歌『約束』がヒットした時は、俺のバンドでツアーに回ってたし、引っ越しを手伝わせたりもした。勝手に徹の部屋に上がり込んで飲んだり。思い出が尽きないね」。後輩への「The Look Of Love」を胸に、中村は第一線を走り続ける。

 ◆中村 雅俊(なかむら・まさとし)1951年2月1日、宮城県女川町生まれ。72歳。慶大在学中に文学座の研究生に。大学卒業直後の74年テレビドラマ「われら青春!」の主役に抜てきされ芸能界デビューし、「製作者協会新人賞(エランドール賞)」を受賞。主題歌「ふれあい」が大ヒットし、同年に同曲を題材にした主演映画「ふれあい」で銀幕デビュー。182センチ。血液型O。

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