極楽鳥のオスも、最初の1~2年はメスとそっくりなんです。なぜかっていうと、メスそっくりの外見であれば、他のオスから排除されずにダンスのテクニックを学ぶことができるから。
メスそっくりの若いオス、そしてその成長過程の写真は、私が今度出す写真集に収録しています。この写真は、おそらく私しか撮っていないと思いますね。
モテるオスが目立つ「お立ち台」システム
──どんなオスがモテるのですか?
外見が同じ種類も多いんですけど、極端に外見が違う種類はだいたいメスが卵を抱く種類ですね。そういうのはオスがメスに餌を運んでます。
同じ色の鳥では子育ては交代でやることが多いんですけど、極楽鳥とかニワシドリとかはメスだけが子育てをします。
オスは子育てにはいっさいかかわらずに、来たメスと交尾をするだけ。メスはオスをいろいろ見て歩いて、どの個体のDNAをもらうかっていうのを選ぶ。一番優秀だと思った個体をメスが選んで、交尾だけしてDNAをとっていくっていうことですね。
つまり、メスのほうが断然優位で、オスは選ばれるしかない。
だからオスはかっこいいダンスをひたすら練習するんです。ダンスがうまくて、活発だということは、そのオスは健康だということですから。
──ダンスが下手なオスはどうなるんですか?
タンビカンザシフウチョウの話をしましょう。5回ほど撮っていますから、世界で僕が一番くわしいのではないでしょうか。
彼ら、タンビカンザシフウチョウのオスは、ノドの一部が光ってメスを引きつけます。そして地面を掃除して踊る場所を作る。
強いオスはそこで待っていればメスが来るからいいんですが、弱いオスはどうするか。ほかの弱いオスたちと集まって、集団お見合いみたいな状況を作るんです。
そこでオスはぴょんぴょん動き回ってアピールする。僕が撮った写真だと、一番上にいる茶色いのがメス。その次の上にいるオスはベテランで、たぶん下のほうは若いやつじゃないかな。
──まるで合コンみたいですね。下にいる若いやつはビールを注文させられているようにも見えてきます。
うん、上のほうにいる2羽のベテランのオスの抑えがきいていますね。
複数のオスと複数のメスが集まる場面は、観察例はあるけれど写真に撮ったのは僕が初めてだと思う。
──ダンスは一羽でするものなんですか?
オスが集まってみんなで踊る種類の極楽鳥もいます。
でも、そのオスたちにも「ランク」があって、一番強い個体が使う枝っていうのが決まっているんです。だいたい上の方の枝ですね。その枝にメスが集中するわけなんですけど、下のほうで他のオスが一所懸命踊っているんです。「こっち来い、こっち来い!」って。
──ジュリアナ東京のお立ち台システムですね。
とはいえ、お立ち台のてっぺんを守るオスも大変です。次から次にやってくるメスと交尾を続けていくんだから、タフじゃないといけませんよね。一方で下のほうのオスはおこぼれを狙う、というわけです。
「機能性」より「美しさ」!
──このなが~い尾羽、とてもきれいですね!
これは尾羽に見えるかもしれませんが、飾り羽なんです。尾羽は30cmくらいなんですけど、飾り羽を入れると60cm以上になる。
これだけ長いと飛びづらそうに見えますが、それでも天敵が少ないから大丈夫なんです。おまけに食べ物もふんだんにある。機敏に動く必要がないからこんなに長く飾り羽が発達してきちゃったんですね。
このオジロオナガは、長いものだと1mくらいの飾り羽があります。これが森の中で虫を取ったり木の実を食べたりしているときに、たまに木の枝に引っかかるときがあるんですね。そういうときはくちばしで丁寧にほどくんです。
──こんがらがって動けなくなることはないんですか?
ないだろうけど、まれに引っかかっちゃってちぎれることはあるようです。飾り羽が半分切れている個体とかも見ますからね。でも、しなやかだからそういったことは本当に少ないみたいです。
飾り羽は全部一方向に生えているわけだから、前に進んでいる間は引っかかることはないんです。バックすると引っかかっちゃいますけど、そういうことはほとんどないし。