【加藤和樹編】ミュージカル『るろうに剣心 京都編』インタビュー企画【その1】

ミュージカル『るろうに剣心 京都編』が5月から6月にかけて上演される。

本作は、和月伸宏の剣劇漫画「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」を原作にした新作ミュージカル。脚本・演出を小池修一郎が手掛け、360°回転する客席の周囲をステージとスクリーンが囲む劇場・IHIステージアラウンド東京で、原作の中でも特に人気の高い“京都編”のエピソードを上演するという注目の作品だ。音楽を手掛けるのは太田健と和田俊輔。主人公・緋村剣心を演じるのは小池徹平。

ローチケでは、本作の出演者たちに直撃取材を敢行! その第一弾として、比古清十郎役の加藤和樹のインタビューをお届けする。

フィジカルな説得力と、あとはどれだけ比古清十郎のことを理解できるか。

――ミュージカル『るろうに剣心 京都編』に出演することへの感想をお聞かせください。
「単純に嬉しいです。原作は子供の頃から読んでいて、漫画は今も全巻持っていますから!」


――この作品は2年前にコロナ禍で上演中止になり、加藤さんは今回からの参加ですが、その辺りはどう感じていらっしゃいますか?
「そこにプレッシャーは意外とないんですよ。演出は小池先生ですし、主演の(小池)徹平ちゃんも知った仲だし(※ふたりは小池修一郎演出のミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』にてWキャストで主演を務めた)、共演経験のある方々がいますしね。それにみんなは2年前に中止になったぶんモチベーションも高まっているので、そこに入れるっていうのが、ある意味、自分も引き上げてもらえるなと思っています。すごくやり甲斐を感じますし、楽しみです」

――原作がお好きとのことでしたが、そのうえで、ご自身が比古清十郎を演じることにはどう感じられましたか?
「比古かあ!と思いました。年齢的にもそういう役をできるようになったんだなって。飛天御剣流ができるのが嬉しいです。ただ(演じるうえでは)マントがね……。なんで修行する時に外さないのかなって、今になってちょっと……(笑)」

――(笑)。あのマントはすごく重い養成ギプスなんですよね。
「そうです。継承者の証でもあります。マントを外すと強すぎちゃうんだけど、(演じるうえでは)外してほしいですよね」

――(笑)。どんな人物だと思われますか?
「僕は『るろ剣』の中で最強だと思っています。だってあの剣心が、どれだけ向かって行っても一撃すら入れられないですからね……どんだけだよ?って思います」

――そういう人物を演じるには何が必要だと思われますか?
「フィジカルな説得力も必要だと思いますし、あとはどれだけ彼のことを理解できるかじゃないかな。今回に限らず、原作ものをやらせていただく時ってやっぱり原作への愛情がないと成り立たないと思うんです。『るろうに剣心』は僕が子供の頃から好きな作品ですけど、そうじゃなくても、この作品に触れてこの役が好きになったとか、作品が好きになったとか、そういう気持ちやリスペクトがないと成り立たないと思います」

――逆に原作ファンだからこその難しさもありますか?
「やっぱり憧れがあるからこその、“イメージを崩せない”っていう難しさはあります。『今回はこうだから』と言われても、『でも原作のキャラクターはこうで』っていう原作ファンのこだわりが僕にもあって。そこのうまい折り合いのつけ方は未だに難しいです」


――上演時間に限界がある中でエピソードをまとめると、どうしても省く部分も出てきますもんね。
「そう、だから『なんでこの台詞がないんですか!』とか出てくる(笑)。仕方がないんですけどね」

――余談ですが、どの登場人物に一番共感しますか?
「共感って言うと難しいけど、剣心の生き方はすごくわかります。今ウクライナで起きている戦争でも思うことですが、間接的な支援はできても、遠く離れた国の人たちを直接救うことはできないのが現実で。だけど、自分の手が届く範囲にある幸せや穏やかな暮らしを守ることはできる。剣心のそういう姿に共感できます。やっぱり自分のできることって限られているから。剣心の、“自分の限界”や“できること・できないこと”をわかっているところが素敵だなと感じます」

 

小池先生が最高のおもちゃを手に入れてしまいました。

――小池修一郎先生の演出は何度も受けていらっしゃいますが、今回はどのようなことを感じていますか?
「期待感です。小池先生は『絶対に面白いものになる』という確信を持たせてくれる方なんですよ。ただ、稽古場でおっしゃっていることはほとんどわからないですけどね(笑)。理解できないことのほうが多いんだけど、でもそれを理解できて、そしてカタチになった時にはやっぱり『こんなことを考えていたんだ! すごい方だな!』って思うんですよ。いつも蓋を開けると誰もが『うわ、すごいわ』と思わざるを得ないものになるから、小池先生の頭の中ってどうなっているんだろうなって思います」

――今回はそういう小池修一郎さんとIHIステージアラウンド東京が掛け合わさりますからね。
「僕はもう、小池先生が最高のおもちゃを手に入れちゃったなって感覚ですよ。だからついていけるかすらわからない(笑)。あれもやりたい、これもやりたい、が実現できてしまう劇場ですから」

――稽古も始まっていますが、既にそういう雰囲気はありますか?
「まだ具体的にはわからないことばかりなのですが、話を聞く限りは大変そうです(笑)。まずこの『京都編』って登場人物がすごく多いじゃないですか。つまり、見せなきゃいけない場面がたくさんあるってことなんですよ。だから多分、客席が回る回数も多いと思いますよ。しかし、果たしてその場面転換に、我々キャストはついていけるのか!?(笑)」

――(笑)。剣心役の小池徹平さんとは師弟関係の役で向き合う時間も長いですが、どのような印象がありますか?
「頼りになる男です。『1789 -バスティーユの恋人たち-』は本当にお互いがお互いを支え合ってできた公演でした。だから今回、僕は彼のことをとことんサポートしてあげたいと思いますし、舞台上で芝居するときはお互い遠慮なくぶつかり合いたいです。徹平ちゃんってどれだけ大変な状況でもキャストと作品への愛を忘れない人なので、信頼感もあります」

――お芝居ではどうですか?
「とても真っ直ぐなお芝居をされます。台詞の吐き出し方ひとつもそうで、しかもそれがちゃんと伝わる。小池先生も会見で『剣心という役が要求する純粋さを体現できる』とおっしゃっていましたが、僕も本当にそう思います。剣心って流浪人になってからは自分に正直に生きているので、その真っ直ぐさと目の輝きがそっくりです。一度決めたら真っ直ぐ信念をもって突き進むタイプの人なので、時々役者として眩しく感じてしまうような、そういう魅力がある方です」

――では最後に、加藤さんがこの作品で楽しみにされていることをお聞かせください。
「楽しみなのはやっぱりIHIステージアラウンド東京に立てるってことです。僕は『ウエスト・サイド・ストーリー』Season3で(コロナ禍での中止によって)立つことが叶わなかったので。そういう意味では、この劇場で、ちゃんとお客様が入った状態で、公演をすることができるっていうのが楽しみなこと。まだ幕を開けるまでわからないですけどね。気を抜くことなく感染症対策をしっかりしながら稽古に臨んでいきたいです。そして幕が開いた後は、カーテンコールでお客様が笑ってくれていたらいいなって。お客様の反応を一番楽しみにしています」

インタビュー・文/中川實穗
写真/山口真由子