3月1日、早稲田大学教育学部の合格発表があり、僕らが1年間、お手伝いさせていただいた、小倉優子さんの大学受験が終わりました。第1志望の早稲田大学は不合格でしたが、白百合女子大学の合格などを得て、4月から晴れて大学で学ぶ権利を得ました。
3児の母でタレントの小倉さんの受験については、テレビ番組「月曜の蛙(カワズ)、大海を知る。」(毎週月曜日午後10時、MBS/TBS系全国ネット)が密着取材していて、僕らが小倉さんの受験をサポートすることになったのも、この番組とのご縁からです。
先日、受験結果の放送があったので、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、受験した大学と学部、そして合否をまとめておきます。
- ・津田塾大学学芸学部 → 不合格【偏差値63】
- ・学習院女子大学国際文化交流学部 → 補欠【偏差値61】
- ・白百合女子大学人間総合学部 → 合格【偏差値55】
- ・学習院大学文学部 → 不合格【偏差値67】
- ・成蹊大学文学部 → 不合格【偏差値66】
- ・早稲田大学教育学部 → 不合格【偏差値72】
この結果をどう評価するかは、人それぞれだと思います。
「小倉さんは、ここで心折れてしまうのではないか?」
僕としては、1年前に初めてお目にかかったとき、中学レベルの知識さえ曖昧だった小倉さんが、3人のお子さんをシングルマザーとして育て、タレントとして働きながら、猛勉強の末に大学合格をつかんだことには、純粋に敬意を感じます。
第1志望の不合格についていえば、そもそも「早稲田を目指そう」とたきつけたのは僕で、小倉さんの責任ではありません。受験勉強はハードですから、モチベーションの維持、向上には、高い目標設定が不可欠と考えてのことでした。
受験のサポートをやらせていただいた1年間で、僕が一番不安になったのは1月14日の大学入学共通テスト直前。小倉さんから「発熱した」という連絡がLINEで届き、受験を見送ると決めたときでした。
共通テストには追試(追試験)といって、病気などで受けられなかった場合の救済措置があります。けれど、追試は1月28日。本来ならば、共通テストが小倉さんにとって「初めて体験する大学入試」だったので、出ばなをくじかれてしまった形です。追試までの約2週間、どんな気持ちでどう過ごせばいいものでしょう。
しかも、追試の3日後(1月31日)には学習院女子大学の入試があり、その3日後が白百合女子大学の入試です。中2日で入試が続くスケジュールを余儀なくされてしまいました。そんなところに「共通テストの追試は本試験より難しいらしい」なんていう、まことしやかな噂も流れてきます……。
そんな状況では、誰だってメンタルが不安定になります。あの時期は、僕らが授業をしている最中に、小倉さんがふいに涙を見せることもありました。
僕も不安でした「どうしよう、大丈夫かな」と。「小倉さんは、ここで心折れてしまうのではないか。追試を諦めてしまうのではないか。学習院女子大学の入試会場には現れないのではないか……」。実をいうと、僕はあのとき、そんなことさえ考えていたのです。
「やる/やらない」の二択で、どちらを選ぶか?
しかし結論からいうと、それは杞憂(きゆう)でした。小倉さんは、ちゃんと追試の会場に現れ、共通テストを受けました。初めての入試で緊張したのか、この日の結果は散々でしたが、3日後に受けた学習院女子大学は「補欠」。さらに3日後に受験した白百合女子大学は合格でした。
不合格に終わった学習院大学、成蹊大学も、僕の採点では合格ラインまで、あと1問か2、3問というところでした。
精神的に追い詰められても諦めず、しっかり前を向き続けて、勉強を続け、合格をもぎ取ったのです。
この1年を振り返って「これがあったから小倉さんは合格できた」と思うことがあります。3人のお子さんがいて、仕事もある小倉さんの受験において、僕が「一番大変だっただろう」と思う部分でもあります。
それは、「やり切る力」です。
「やるか、やらないか」という岐路に立ったとき、小倉さんは最後までずっと「やる」という選択を下してきました。だから、小倉さんは合格できたのではないかと思うのです。早稲田を目指すのか、目指さないのか。英単語200語の暗記をやるのか、やらないのか。今日、試験会場に行くのか、行かないのか……。すべての選択で「やる」方向を必ず選んできたのが、小倉さんのすごいところで、同じ立場に立ったとき、ほかの人にはなかなかできないことではないかと思うのです。
漫画『ドラゴン桜2』に、こんなセリフがあります。
「『やらない』方向に成功はない」
模試の成績が上がらなくて、東大受験を諦めようとする天野晃一郎に、桜木建二先生がかけた言葉です。
本当のバカとはやらないやつのことだ
1年前まで中学レベルの知識も曖昧だった小倉さんが、なぜ大学に合格できたのかといえば、地頭がよかったとかそういう話ではなくて、ひとえに最後まで「やる道」を選んだからだと思うのです。どんなに苦境に立たされても、「失敗しない道」ではなくて「リスクはあっても成功する確率がある道」を選んで、頑張り続けることができたからだと、近くで見てきて痛感します。
僕は今回、小倉さんに勉強を教える役回りでしたが、企画を通して、むしろ小倉さんから学ばせていただいたことのほうが多く、大きかった気がしています。そう思うのは僕だけではなくて、僕と一緒に小倉さんの勉強をサポートしてきた学生メンバーも皆、そう口をそろえます(こちらにメンバーのコメントを集めました)。
なかでも、小倉さんから学んだ「やり切る力の重要性」は、ぜひ多くの人に知っていただきたいと思うのです。
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